「レイモンド王太子がお見えになったので、お通ししたけれど、会えそうかしら?」
ハンスが私の様子を伺いに来て帰宅すると、レイモンド王太子が約束もないのにお見えになった。
アゼンタイン侯爵夫人は本当に人の気持ちに寄り添う素敵な女性だ。
8歳も年上の女性関係の激しい王太子の婚約者に指名された私を心配してくれている。
「お母様、ご心配なさらないでください。もちろんお会いしますわ」
私の実の母親は死んでしまい、カルマン公爵家で私の母親ということになっていた女は私を虐待した。
アゼンタイン侯爵夫人は、既に自分と血の繋がった子もできたのに未だ私に優しくしてくれる。
彼女を困らせることだけはしたくなかった。
「お会いしたかったです。エレノア」
レイモンド王太子殿下がバラの花束を渡してくる。
他の女性にも配っている花束なのだろう。
私を利用するために持って来た小道具のような花束に嫌悪感が湧く。
ハンスが何でもない日に私に照れながら渡して来た紫陽花の花束と比べてしまう。
「エレノア、お前紫陽花姫って呼ばれているらしいぞ。やったじゃないか!」
ハンスが私に花束を持って来たのは私を励ますためだった。
私は自分が侯爵家に紛れ込んだ孤児院の野良猫と呼ばれていることを知って傷ついていると思ったんだろう。
本当の私は孤児院の野良猫ではない、世界を旅する野良猫だ。
ハンスが私の様子を伺いに来て帰宅すると、レイモンド王太子が約束もないのにお見えになった。
アゼンタイン侯爵夫人は本当に人の気持ちに寄り添う素敵な女性だ。
8歳も年上の女性関係の激しい王太子の婚約者に指名された私を心配してくれている。
「お母様、ご心配なさらないでください。もちろんお会いしますわ」
私の実の母親は死んでしまい、カルマン公爵家で私の母親ということになっていた女は私を虐待した。
アゼンタイン侯爵夫人は、既に自分と血の繋がった子もできたのに未だ私に優しくしてくれる。
彼女を困らせることだけはしたくなかった。
「お会いしたかったです。エレノア」
レイモンド王太子殿下がバラの花束を渡してくる。
他の女性にも配っている花束なのだろう。
私を利用するために持って来た小道具のような花束に嫌悪感が湧く。
ハンスが何でもない日に私に照れながら渡して来た紫陽花の花束と比べてしまう。
「エレノア、お前紫陽花姫って呼ばれているらしいぞ。やったじゃないか!」
ハンスが私に花束を持って来たのは私を励ますためだった。
私は自分が侯爵家に紛れ込んだ孤児院の野良猫と呼ばれていることを知って傷ついていると思ったんだろう。
本当の私は孤児院の野良猫ではない、世界を旅する野良猫だ。



