フィリップ王子殿下は特別優秀で人間性も格別だから必ず合格するだろう。
免疫がない王子殿下が変な女に引っかからないように、彼には見守っていてほしい。
できれば私の大好きな2人が仲良く幸せになってくれればと願った。

「いい時間でした、アゼンタイン侯爵令嬢」
ハンスが去って、ふと思い出した。

今日はフィリップ王子とは接触しないようにと言われていた。
国民感情が不安定な中、王家の一挙手一投足に注目が集まっている。

国王陛下と王妃様は理不尽な不義理を疑われて評判が悪く、レイモンドは奔放すぎて評判は最悪だ。

その3人への不満の裏返しのように、清廉潔白で美しいフィリップ王子は大人気だ。
レイモンドの婚約者である私が接触すると、傷1つない彼に悪い噂がたちかねない。

私は、彼と図書館で踊った日のことを思い出した。
野良猫がお姫様に変身した一生に一度の奇跡の時だ。
もし、また彼と踊れるならこれ以上幸せなことはない。