逃亡した帝国の公女は2人の王子に溺愛される。

貴族達は自分の爵位が奪われることを恐れて、サム国が帝国領になることを贖い難い恐怖が近づくまで拒否するだろう。

それは王族という地位にこだわる国王陛下やレイモンドも同じだ。
この時点で、サム国の9割を占める平民に心を寄せて帝国領になることを望むのはフィリップ王子殿下だけだ。

それが分かっているから、あえて国の方針を決める会議に彼を出席させないのだろう。

「王子殿下の誕生日にはプレゼントも贈らない失礼をしてしまい申し訳ございませんでした。何か私にプレゼントさせて頂けませんでしょうか」
1週間前がフィリップ王子の15歳の誕生日パーティーだった。

私が彼にプレゼントをすると要らない憶測を読む可能性があり、絶対にプレゼントをしないほうが良いと言われた。
プレゼントを持たずパーティーに出席する失礼よりも、婚約者の弟にプレゼントをすることによってあらぬ噂が広がるのを防ぐ方が良いと言うのがこの国の価値観なのだ。

私は手ぶらで彼の誕生日を祝う舞踏会に、レイモンド共に参加した。

「では、エレノア姫と踊る権利を頂けますか?」
フィリップ王子殿下のプラチナブロンドの髪がふわっとしたと思うと、彼は私にひざまづいていた。

彼の美しい海色の瞳に映る私は、見ていられない程赤面している。

彼の差し出した手に震える自分の手を重ねた。
踊るといっても図書館だ、確かに私達以外他に人はいないけれど曲もないここでどう踊れば良いのか。

「ハンス・リード、歌います。存分に踊ってくださいね!」
ハンスの声が耳に入ってきて、思わずフィリップ王子殿下を見つめる。