「エレノア、邸宅に帰ったんじゃなかったのか?」
図書館に行くと、ハンスとフィリップ王子が2人きりで勉強していた。

おそらく、ハンスが試験前だから勉強を教えて欲しいと迫ったのだろう。
フィリップ王子だって試験前なのにハンスの面倒を見てあげるなんて優し過ぎる。

「試験勉強をしようと思って図書館に来たのです。フィリップ王子殿下、緊急の貴族会議があるそうですが参加をしなくても大丈夫なのですか?」

フィリップ王子は優し過ぎるし、ハンスは憎めない人懐こさがあるから心配になった。

フィリップ王子だって試験前だと言うことに変わりはない、でもハンスから勉強を教えて欲しいと言われて断れなかったのではないだろうか。

「僕は試験前だから出席はしなくて良いことになっているんだ。心配してくれてありがとう、エレノア」

彼の美しい海色の瞳を見て、泣きそうになった。
この時点でサム国が帝国領になることになっているのは平民だけだ。