私が気絶していた2日間さえ、レイモンドはあの部屋にずっといたらしい。
眠るための部屋なのに、食事までベットサイドで私を眺めながらしていたというのだから驚きだ。

どうりで起きた時、食べ物の匂いがすると思った。
どうして王族であるのに、部屋の用途を守るという最低限のマナーを守れないのだろう。

2日後に私があの部屋から出て来た時、アゼンタイン侯爵夫人が非常に心配していた。
手が早くて有名な危険な王太子殿下と、私を2日間も密室で過ごさせてしまった罪の意識に苛まれていた。

泣きそうな顔で、アゼンタイン侯爵に私とレイモンドの婚約破棄をするよう訴えていた。
そんなアゼンタイン侯爵家の波乱の日があったことなんて教えたところで彼は何とも思わないのだろう。

「私の誕生日など、どうでも良いことです。もうすぐ、帝国の要職試験があります。世界中で受験資格がないのは帝国領になっていないサム国の民だけです。フィリップ王子なら、きっと帝国の要職試験を受けられるようにサム国を帝国に明け渡すと思います。このチャンスを逃すと次のチャンスは4年後になります。今回の帝国の要職試験の後、一気に王家への不満が高まると思います。王家としての体裁を保ちたいにしても、フィリップ王子を王太子にして国民にアピールするしかないです。レイモンドは貞淑を重んじるサム国の国民としては、どんなに仕事ができても尊敬に値する存在にはなれないのです。今更、女断ちしても過去にしてきたことは変えられません」