「エレノア、エレナ・アーデンのことも苦しい時間のことも私が忘れさせます」

レイモンドはそう言いながら、私の唇を親指でなぞりだした。
どうやらまともには話を聞かず、また性欲に囚われていたらしい。

「結構です。私にとって彼女はいつだって力を与えてくれるヒーローのような存在です。レイモンド、到着したので私から離れてくれませんか ?身動きが取れません」

私が彼を追い払おうとすると、彼はまた誘拐犯のようにヒョイっと私を抱き上げてきた。
歩けないからフィリップ王子にお姫様抱っこしてもらったという設定にしたのを思い出した。