逃亡した帝国の公女は2人の王子に溺愛される。

「帝国の建国祭に行ったことがあるのですよね。会場で金髪で白い礼服を着たみんなが注目する男性を見ませんでしたか? 天界の王子様レナード・アーデン侯爵です。優雅で美しく誰もが一度は恋をする相手だと言われています。彼を見たらレイモンドも同性に憧れる気持ちがわかると思いますよ。さすがはアーデン侯爵令嬢の子種を宿していた方だとご納得頂けると思います」

帝国でみんなが憧れる男性といえばアーデン侯爵令嬢のお父様レナード・アーデン侯爵だ。
貴族令嬢からメイドまで、みんな彼の話をするのが大好きだった。
私は一度見かけただけだが、眩しく圧倒的なオーラがあって彼が噂の人だとすぐにわかった。

「エレノアは金髪が好きなのですか? アーデン侯爵は帝国の重要人物だと聞いていたので、挨拶をしたから知っていますよ。別に憧れる気持ちは抱きませんでしたけどね。エレノアも彼に恋をしたりしたのですか?」

レイモンドが私の紫陽花色の髪をいじりながら話してくる。
なぜ、私を自分の所有物のように扱うのだろうか。
以前のように不快感はないけれど、触れられると彼の性欲スイッチがいつ入るのか分からなくてまた怖くなってしまった。