「ねえ、ハンス、ビアンカ様の様子はどう?」
私は5歳の時からの幼馴染ハンス公子がいる。

彼の父親とアゼンタイン侯爵が知己の仲であるがために私たちを結婚させたいとまで両家は言い合っていた。

彼の姉であるビアンカ様は王太子殿下にご執心だった。

ビアンカ様はアゼンタイン侯爵家に引き取られてばかりで不安に満ち、周囲に攻撃的になってしまい悩んでいた私に寄り添ってくれた方だ。

優しくて穏やかで私は実の姉のように彼女を恐る恐る慕ったが、彼女は全力で私を受けてくれた。
私が婚約者指名をされた瞬間、彼女の私に対する目が一瞬にして敵意に変わった。

彼女だけではない、あの場にいた貴族令嬢は皆レイモンド王太子のおてつきで自分が婚約者に選ばれると思っていた。
だから、10歳で付き合いで婚約者選定のお茶会に出席した私が選ばれるなり驚くほど敵視した目つきに変わった。

「引きこもっているけど、エレノアが気にすることじゃない。王太子の被害者の1人に過ぎないことを認められないだけだから。エレノア、お前は大丈夫だよな」

ハンスのピンク色の髪が心なしか荒れている。
リード侯爵夫妻は当然、レイモンド王太子と娘ビアンカが婚約するものだと思っていた。