「実は、私は淫猥な女です。婚約者の弟に好意を持ってますよ。正直、彼と馬車という密室で2人になるのが怖かったので、あなたが私を拉致して街に連れて行くと言った時に心から安心しました」

私は欲情を隠そうともしないレイモンドに、自分の想いをひた隠しにするのが馬鹿馬鹿しくなって正直にフィリップ王子に惹かれていることを話した。

フィリップ王子に邸宅まで送ると言われ、30分近く彼に魅了の力をかけないようにする自信がなかった。
私は彼に惹かれていて、好きになって欲しいと願ってしまいそうだったからだ。

「フィリップをいくら好きでも、怖くて彼に近づけないのでしょ。彼は純粋なところがあるから、あなたが近づけば彼を壊してしまうリスクが高くなる。もう、諦めて私の側にいたほうが良いですよ」

彼の顔が近づいてきて唇に口づけされるのかと怖くて縮こまり目を瞑った。
唇の端の頬に彼の唇が触れた気がして、ホッとした。