エレナ・アーデンの言う通り暗殺ギルドに行けばよかった。
彼女のいうことは正しい、私は表社会で生きてはいけない人間だ。

「もう、いや、私はあなたが嫌いなのに、あなたの側でしか生きられません」
私はレイモンドの側にいる時は、いつも自然体だった。
彼は知能が高くて、女を道具としてしか見ていないから一番魅了の力がかかりずらい。

表社会で生きるとしたら、彼の側にいるしかない。
他の人間のそばにいる時は、細心の注意を払わなければならない。

私の神経がすり減る以上に、相手をいつ廃人にしてしまうかもわからないからだ。

「じゃあ、私の側で生きてください」
私を見据えた彼が、私の唇を指でなぞってくる。
彼の海色の瞳は明らかに情欲の影が落ちていて、私に口づけしたくて堪らない顔をしていた。

「13歳の少女に欲情しているのですか? 気持ち悪いです。仮面を被って地下の秘密倶楽部で欲求を発散してきてください」
散々女遊びをしてきて、急に女断ちした禁断症状でも出ているのだろう。
私は子供である自身を、女扱いされるのが一番嫌いだ。

「エレノア、ここは貞節を重んじるサム国です。帝国のようにそんな怪しい倶楽部は存在しません」
彼は口づけこそしないでくれたものの、私の耳のあたりをひたすら弄ってきた。
彼は、散々、遊んできたくせに今更自分の国の最大の美徳を理解したらしい。