親愛なる魔王様へ〜The Encounter〜

「クラウスさんは僕が案内するよ」

ルーチェにビオラはそう言った後、荷物を持ったまま歩き出した。



クラウスがこの家で暮らすようになって数ヶ月が経った。

「ルーチェ、おはよう」

「おはようございます。クラウスさん」

クラウスがルーチェに笑いかけ、彼の胸が高鳴る。その時だった。二人の間に強引にビオラが入り込んだ。

「ルーチェ、朝ご飯運ぶの手伝って」

「兄さん。わかったよ」

肩に腕を回され、ルーチェは強制的にクラウスから引き離される。ルーチェはビオラを見上げた。ビオラは無表情である。

「兄さんは、クラウスさんのことが嫌いなの?」

キッチンに並んで立った時、ルーチェは思い切って聞いてみた。ビオラはサラダを盛り付ける手を止め、ルーチェを見つめる。その瞳には心配があった。

「あいつ、なんか胡散臭いっていうか……。何かを隠していそうなんだよね」

「クラウスさんは優しい人だよ?」

ルーチェはクラウスのことを思い浮かべる。クラウスはルーチェが困っているとすぐに助けてくれるのだ。