親愛なる魔王様へ〜The Encounter〜

クラウスが目を見開く。ルーチェは何度も頷いた。

「お金を盗賊から取り戻すのは難しいと思うので、旅資金が貯まるまでいてください」

「じゃあ、お言葉に甘えようかな」

クラウスは微笑む。ルーチェの胸が高鳴った。



ルーチェはその後、クラウスを家に案内した。ルカとエレナ、そしてビオラは家にいたため、事情を説明する。ルカとエレナはクラウスが家にいることに賛成した。

「盗賊に襲われたなんて……。無事でよかったわ」

「部屋は余っているし、好きなだけいてくれていいよ」

ルカとエレナは好意的にクラウスに微笑みかける。クラウスも嬉しそうに「ありがとうございます」と頭を下げた。しかし、ルーチェには気になることがあった。

(兄さん……)

ビオラは無表情のまま、クラウスをジッと凝視していた。これほどまでに警戒心を露わにするビオラを、ルーチェはこれまで見たことがない。

「ルーチェ、部屋に案内してもらってもいいかな?」

クラウスが話しかけてくる。ルーチェが「はい!」と言ってリビングを出ようとすると、クラウスの荷物をビオラが奪い取るように持った。