親愛なる魔王様へ〜The Encounter〜

「おっ、気付いた!」

アーサーが安堵したように息を吐く。男性は赤い瞳でルーチェたちを見つめた後、「君たちが助けてくれたの?」と訊ねる。ルーチェはすぐに「ティムが助けました」とティムを差した。

「そんなに酷い傷じゃなかったので……。あっ、ティム・ラファールです」

「アーサー・ウィリアムズです!」

「ルーチェ・ガーデンです」

三人は自己紹介をする。男性は体を起こした。髪がサラリと揺れる。

「僕はクラウス。クラウス・ディオール。助けてくれてありがとう」

クラウスは名前を名乗った後、自身が旅人をしていることと盗賊に襲われたことなどを話した。そして自身の持っている荷物を見て、ため息を吐く。

「やっぱり金品は全部盗られてしまったみたいだ……」

そう悔しげに言う横顔に、ルーチェは目を離せない。まるで、有名芸術作品が目の前にあるかのように思えた。気が付けば、ルーチェはクラウスの手を取っていた。

「あの!よかったら僕の家に来ませんか?」

「えっ?いいの?」