「でㇵルールを…ア、すっヵリ忘れテイマした。ミナサマには『異色(いしょく)』トイうものヲオ配りしまㇲ」


 あまり聞かない単語で理解が難しく、首をかしげる。

 周りも同じだったようで、異色という言葉に疑問を抱いているようだった。

 すると、舞台側から手を二回叩く音が聞こえた。

 偉い人が人を呼びつけるために手を叩くのと似たような感じであった。


 「…っ!?」


 思わず自分の上を見上げた。

 白髪の髪、およそ人間だとは思えない不思議な色をした肌、春風と似た姿形。

 それは勢いよく、床に落ちた。

 そのときに大きい音を立てて体を打ちつけていたから、かなり痛そうに見える。


 「こレが、ミナサマの『異色』デㇲ」


 ほう、これが異色…?俺の?春風の頭は混乱し始める。

 落ちてきた異色を見てみると、髪、瞳、肌の色以外は春風と本当にそっくりである。

 体型も顔のパーツの配置も同じだ。

 しかし、完全に一緒ではなかった。

 春風は黒髪だが、異色は白髪だ。

 春風の瞳は赤だが、異色の瞳は青緑だ。

 春風の日焼けした肌とは違って、異色の肌はとても暗い青緑の色をしていた。

 それに加えて春風のセンター分けにされた左側の前髪に赤メッシュが入っている。

 異色はそれこそ同じ場所にメッシュが入れられているが、それは青緑色である。

 春風と異色の色の組み合わせを補色、というのだろうか。

 落ちてきた異色は痛そうにしている。

 その様子を可哀想だと他人事に思った。


 「すげー!めっちゃ似てる!!」


 …呑気だな。

 他の人たちの様子を確認すると、

 困惑だったり、驚愕だったり、興味津々だったりと反応が違った。


 「ミナサマと同ジ声と思考ヲ持った命でㇲ。こレはミナサマの仲間でㇲ」


 「あれだ、以心伝心ってやつ?」


 なるほど。

 自分と同じ思考を異色は持っているということに少し怖さを覚える。

 もしかして、このゲームマスター?は自分たちのことをよく知っているのだろうかと疑ってしまう。


 「異色が死ヌと主(あるじ)も、ミナサマの本体も死ニマす。でㇲが、主が死ンデも異色は死にマセン」


 「異色、絶対死なないでよぉ」


 「こいつが死んだら俺も死ぬのかよ…!?」


 異色に目を向ける。

 何を考えているのか分からない表情をしている。

 異色は落ちてきてから一回も口を開かなかった。

 けど、その方が春風にとっては有り難いことであった。

 なぜなら、異色も春風と同じ声をしている故、喋り始めたら春風の頭は自分の声と異色の声が混じり合い、混乱するに違いないからだ。