「そういえばさー、春風の作る料理食べるの初めてだわ」
「たしかに…」
「楽しみですわねえ」
そんな会話が春風の耳に入った。
期待に応えられるような料理にしたいなと前向きな気持ちにさせてくれる。
そして、ご飯を食べ、一旦嫌なことは忘れていつも通りに戻りたかった。
「春風さん、頑張って」
「あ、桃瀬さんじゃん。ありがと」
そのときだった。
春風のポケットの中のスマホから音がして振動していた。
スマホを取り出してみると…マスターからの電話だった。
「…マスターから電話来たんだけど?怖すぎ」
「早く出てあげなよ」
「わかった。…もしもし、マスター?」
『春風さンデすネ。調理場二食料を追加しテ置きまシタのデ、ご自由にオ使いㇰださィ』
「そ、そうなんですか。ありがとうございます…」
『でㇵ、ゴゆっくリしていッテくださイ』
春風は「あぁ…はい」と曖昧な返事を返すと、電話を切った。
「ゴゆっくリしていッテくださイ」か…命が懸かっているごゆっくりできない環境なんだわ。
ふざけんな。
春風は内心憤りを感じていた。
「なんて言ってたの?」
桃瀬が電話の内容に関心を持ったようで、聞いてきた。
前、電話したときは興味なさそうだったが。
マスターから言われた内容を一通り話して一息つく。
桃瀬は「なるほど」と納得したような表情をしていた。
今回はあしらわれなかった。
