惺南学園 (せいなんがくえん) 中等部二年生。
二学年の在籍人数、二十八人という少人数制の学園。
中等部に通う者はほぼ初等部から内部進学している。
中等部から惺南学園に編入する者もいるが、それも両手で数えられるほどの人数しかいない。
編入してきた者は次第に輪に溶け込み、二年生はそれなりに平穏な関係を築き上げていた。
私立校でありながらゆるく生ぬるい環境で、それがどこか心地よくもあった。
そんな中学校生活も残り半分を切ってしまい、あと一年半後には惺南学園中等部を卒業する。
惺南学園中等部に通う生徒の一人、二年生の 春風勇巻 (はるかぜ ゆうま) はみんなと過ごせる日々に限りがあることをそこまで深く気にしていなかった。
今のこの生活が春風にとって当たり前である故、終わりが来てしまうなんて考えられなかった。
実感が湧かなかった。
本当に思わなかったのだ。
