白様に手を引かれた杏が大広間に入ると、豊穣姫は杏を見てあからさまに眉を寄せた。
「そちらの地味な人間はどなたですか…人間臭くてたまらなないわ。」
豊穣姫は杏に向かって何か汚い物でも見るような表情をした。
すると白様は杏の肩にそっと手を置くと耳元で囁いた。
「杏、何も心配はいらない。我を信じてくれ。」
その様子を見た豊穣姫はさらに苛立った表情をした。
「白龍神様、その人間に何をこそこそお話なのかしら…許嫁の私の前でそのような態度が許されると思うの!」
白様はまっすぐに豊穣姫を見た。
「私はあなたに何度もお伝えしているはずです。私は貴女と結婚するつもりはありません。」
白様の言葉に豊穣姫は怒りで顔を真っ赤にした。
「大神様!これはどういうことでしょうか!」
大神様と呼ばれた白様の父は、少しお道化た表情をした。
「これはこれは…私の育て方が悪かったのでしょうか…愚息をお許しください。」
豊穣姫は大神様が自分の味方をしてくれているように思ったようだ。
「では、すぐに人間の娘をここから追い出してください。見ているだけでも不愉快です。人間なんて無力で汚らしいわ。」
すると突然大神様は言葉を遮るように話を始めた。
「豊穣姫様、出て行くのは、貴女のほうですよ。私達龍神族は人間を汚いなどと馬鹿にするものはおりません。貴女はなにか勘違いをされているようですね。」



