私なんかが神様のお嫁さんになりました

ちょうど朝食が終わり杏が女性達と片付けをしている時だった。
玄関のほうに居た女性が慌ただしく走って来たのだ。

「大龍神様、奥方様、そして豊穣姫様がお越しになりました。」

豊穣姫様と呼ばれている方がおそらく白様の許婚なのだろう。
豊穣姫様とは穀物が豊かに実ることを司る神様のようだ。

杏は洗い物をしていたため前掛けをとり濡れた手を拭いていると、そこへとても美しい女性が現れた。
シルバーの髪に赤い瞳。
白様そっくりなその女性は一目で白様のお母様という事がわかる。

杏は緊張のあまり震えが止まらず挨拶も出来ないくらいだった。

「あ…あの…私は…」

するとその女性は表情を柔らかくして杏を見つめた。

「あら、あら、そんなに緊張して可愛らしい女性(ひと)ねぇ。…なるほど白が気に入ったことも納得できるわ…あなたは自分の朝食の後片づけもしているのね…自分の立場に溺れず良い子じゃない。」

白様のお母様と思われるその女性は杏の頭に手をあてて優しく撫でてくれたのだった。

「…恐れ多いです…ありがとうございます。」

杏が恐縮しながら言葉を出すと、その女性は楽しそうな表情で笑い出した。

「白のお嫁さんは私の娘と同じよ。そんなに恐縮しないでね。」

「でも、白龍神様には許嫁の方がいらっしゃるとかで、私なんて…」

その女性は杏の顔を覗き込むよようにして話を始めた。

「許婚なんて古い話で私は好きじゃないの、白が選んだ女性ですもの私は貴女の味方よ。許嫁の豊穣姫は白と夫婦になりたいと望んでいるけど、決めるのは白だからね。大丈夫よ。」

白様のお母様はとても優しい女性だった。

「じゃあ、また後程ね。」

その女性は杏に片目を閉じてウィンクをしてみせると、ひらひらと手を振って去って行ったのだ。
杏は緊張で足が震えるほどだったが、白様のお母様の優しさに少し胸を撫でおろしたのだった。