私なんかが神様のお嫁さんになりました


白様がお出かけになってすぐのこと、お屋敷の女性たちが何か慌てているように見える。
そして女性達が杏に近づいて来た。

「杏様、絶対に声を出さないでください。今から妖の鈴に杏様のお姿を隠すように妖術を掛けさせます。さぁ、早くこちらへ。」

杏は自分の部屋に連れて行かれると、鈴は杏に向かって白い羽を大きく広げた。
そしてゆっくり数回羽ばたくと杏はキラキラとした光に包まれた。
鈴が杏に向かって説明をする。

「杏様、これで皆にはお姿が見えません。お声や物音を立てないように気を付けてください。」

少しすると杏は聞き覚えのある声を耳にする。

「杏!どこにいるんだぁ~父さんだぞ!お前には辛い思いばかりさせて来たが皆も謝りたいと言っている。一度家に帰ってはくれないか?」

なんと父親が止める女性達を振り払うようにしてお屋敷に入って来たのだ。
本来であれば白龍神様の結界で守られているお屋敷だが、財前家に古くから伝わる『通りの杖』を使ったようだ。
この杖は人間の世界と神の世界を通り抜けると言い伝えられていた。
財前家当主である父親はその言い伝えを知っていたようだ。

(…それにしても、本当に神の世界に入れるとは言い伝えは本当だったのだな…)
「杏!どうか一緒に戻ってくれないか。お前を迎えに来たのだぞ!」

杏は父親を見て思わず声をだしてしまう。

「…お父様。」

「杏かい、さぁ父さんと家に帰ろう!」

杏は鈴に向かって術を解くように言ってしまう。

「鈴様、どうか術を解いてもらえませんか…お願いします。」

鈴は杏から頼まれて戸惑いながらも妖術を解いてしまうのだった。