2300年の日本では女性の妊娠と出産を妨げる「女食病(おんなくいびょう)」が大流行し人口は2025年の10分の1に激減し

ていた。

このままでは日本が滅亡してしまうと見通しを立ててしまった政府は最新の技術を使いiPS細胞と人口子宮

を使い胎児を新しく作った。「作られた胎児」は日本の人口回復に大きく貢献する。ミスをしながら。時

に栄養注入の偏りや温度管理の間違いで障害を持ったり感情を持たなかったりする子供が産まれることが

あるのだ。けれど政府がこの問題に顔を向けることはない。政府は「作られた胎児」の親という扱いだが

自分の子がいるかもしれないし「作られた胎児」たちは自分の子ではない。

かれこれ「作られた胎児」の技術は30年で大きく発展した。髪の色を設定したり能力を設定したり誰か

と同じ記憶や答えを持たせたり。そういうことが可能になった。全国のお金持ちたちは子供を持てない

ことを理由に自分または自分のパートナーに似せた子供を作りたがった。そして養子とする。それが自

分の子を持つたったひとつの方法となることも多いから。

そうして人類は古くから生きるために必要不可欠だった「生殖」の必要性を失った。自分たちで体の関

係を持たなくても国が勝手に子供を作り教育してくれるから。育てたい人には育てる方法も残されてい

るから。

そして、この物語は2300年という私たちにとって果てしない未来にある「倫理がない世界」で起きる世

界にとってはささやかなでも大きな「恋」の物語。