📖 プロローグ

　深夜、山間の村の旧校舎跡地。
　荒れ果てた黒板に、赤黒い線が浮かび上がる。
　誰もいないはずの教室で、チョークではなく――血で描かれた文字が震えるように刻まれていった。

　「これで　すべて　おわる」

　翌朝、現場を訪れた警察は、乾ききらぬ血文字を目撃した。
　しかし、校舎の中には死体も、怪我人もいない。
　誰の血なのか、どうやって書かれたのか、一切が不明のまま。

　記者・相沢蓮（あいざわ れん）は、取材依頼の電話を受けながら胸の奥がざわめくのを抑えられなかった。
　“血文字”――それは二十年前から彼を追い続けてきた言葉だ。
　過去の事件を暴き、真実を求め、いくつもの惨劇を目の当たりにしてきた。

　だが今回は違う。
　血文字は「始まり」ではなく、「終わり」を告げている。
　まるで、すべてを知る者が“最後の幕引き”を選んだかのように。

　――これは終焉なのか、それとも新たな惨劇の始まりなのか。


　---

　🎭 登場人物

　■ 相沢 蓮（あいざわ れん） ― 主人公

　40代半ばのジャーナリスト。
　二十年前の「神谷家失踪事件」から続く“血文字”事件を追い続けている。
　真相に迫るほど、自身の過去や罪にも影が差していく。

　■ 神谷 美緒（かみや みお）

　失踪した神谷家の娘。
　既に亡くなったはずだが、血文字や怪異として現れる存在。
　「残響」の象徴でもあり、終焉の鍵を握る。

　■ 藤崎 圭吾（ふじさき けいご）

　警視庁捜査一課の刑事。
　合理主義者で怪異を信じないが、血文字事件で数々の矛盾に直面する。
　相沢とは協力と対立を繰り返す関係。

　■ 佐伯 玲奈（さえき れな）

　民俗学者。
　“血文字”を古代の呪術や民間信仰と関連づけて調査する。
　怨念か、集団心理か、境界線を見極めようとする。

　■ 「影の男」

　血文字事件の背後に存在すると噂される人物。
　かつての隠蔽や殺人に関わった“黒幕”か、それともただの幻影か。
　正体は物語の核心。