① 救済型(鎮魂エンド)

 血文字の最後に浮かんだのは「ありがとう」。
 相沢と美沙の前に結衣の小さな姿が現れ、微笑むと霧のように消えていく。
 以降、血文字は増えることなく、廃屋は静寂を取り戻す。
 ――過去は癒され、事件は閉じられた。
 だが、相沢の胸には「自分はただ見届けただけ」という無力感が残る。


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 ② 絶望型(呪縛エンド)

 壁に浮かんだ血文字は「つぎは おまえだ」。
 相沢の体が勝手に動き、血で自分の名を刻み始める。
 叫びもむなしく、彼は“血文字の告白者”の一部となり、廃屋に取り込まれる。
 記事を書くはずだった手が、今や「永遠の告白」を続ける手となった。
 ――残響は止まらず、次の犠牲者を待っている。


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 ③ 自己告白型(どんでん返し)

 最後に壁に刻まれたのは「ほんとうのはんにんは あいざわ」。
 その瞬間、封じていた記憶が相沢に蘇る。
 二十年前、酒に酔った彼は幼い結衣に取り返しのつかないことをしてしまい、事件を“忘却”という形で隠して生きてきた。
 血文字は他人の声ではなく、自分自身の罪の告白だった。
 記事を書き上げる手は震え、彼は「真実を暴く記者」ではなく「真実に暴かれる罪人」として物語を終える。


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 ④ 曖昧型(怪異の余韻)

 警察が事件を解決したはずなのに、血文字はなおも浮かび続ける。
 最後に現れたのは「ありがとう」。
 結衣の霊が救われたのか、それとも誰かがなおも書き続けているのか――判断できない。
 夜の廃屋を後にした相沢の家に、翌朝、封筒が届く。
 中には小さな紙片。「ゆるして」と赤い文字で書かれていた。
 人間の仕業か、霊の仕業か。
 事件は終わっても、残響はまだ続いている。