「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

「俺、牛乳嫌いなんだよね。
 物好きだよね、珠子さん」

 そんなことを小太郎は言う。

 金属で蓋をされた青いガラス瓶に入った牛乳を受け取りながら、珠子は言う。

「私もあんまり好きじゃないんだけど。
 これ、飲んでると、昔に帰れる気がするから」

「……珠子さんが小さい頃は、オヤジが配達してたんだっけ?」

「そうそう。
 あの頃はまだブリキ缶でおじさまが運んで来てらして。

 お母様が渡してくれた土鍋を私が持って――」

 珠子が小さな手で抱えている土鍋に小太郎の父がそっと柄杓で牛乳を注いでくれた。

 懐かしい思い出だ。

 当時から牛乳は苦手だったが、健康のためだと言って飲まされていた。

 今では、身体にいいんだから飲みなさいとうるさく言ってくれる人もいない。

 あれだけ嫌がっていたのに、今では自分で頼んでるんだから、おかしなものね、と珠子は思う。