結局、晃太郎は本を眺めて帰っていった。
「今日はいい日だった。
いい古書店を見つけたな」
そう呟きながら。
古書店のことは覚えていても、私のことは忘れてそうだな……。
そう思いながら、珠子は晃太郎を見送る。
……早くに店を閉めておけばよかったなあ。
あんな感じの人だから、明日には気が変わって来なかったかもしれないのに。
そうちょっぴり後悔していたが。
ガス灯の灯り下、歩いて帰っていく晃太郎を見ていたとき、ふと、懐かしい感じがするな、と思った。
確かに初めて会った人なのに――。
何故だろう。
そう不思議に思いながら、ようやく珠子は店を閉めた。



