「晃太郎様、明け方に見えたハリー彗星、尾が空に長く広がって綺麗でしたね。
空が輝いて見えました。
あ、ハリー彗星って、ハレー彗星のことなんですけどね」
「……だから、誰に断ってるんだ、お前は。
まあ、梅雨入りのころだから、なかなか見えなかったが、とりあえず、見られてよかったな」
「そうですね。
ハリー彗星の尾には有毒ガスがあるので、彗星が近づくと、生き物はすべて窒息死するとか言われてましたが、なにごともなく過ぎましてよかったです」
「そうだな。
自転車のゴムチューブ、お前たちのために買ったんだが、無駄になったな」
「……買ってたのですね」
当時、瓶や自転車のゴムチューブに空気を入れて、ハレー彗星の到来に備えた人が多かったのだ。
「大事なお前たちのためだからな」
「まあ、自転車のゴムチューブは自転車に使ってください」
「……そうだな」
「珠子」
「はい」



