「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

 


 店を出た珠子は、晃太郎が送ってくれると言うので、並んで歩いて帰った。

 道のところどころにガス灯があるが、銀座の電灯、アーク灯に比べれば、まだまだ暗い。

「あっという間にたくさん立ちましたよね」

 珠子の言葉に、ん? と晃太郎が振り向く。

 珠子の視線は道の端に立ち並ぶ電信柱を見ていた。

「電信柱って、邪魔だとか言う人もいますけど。

 私は、夕暮れどきや夜になって、影になった電線と電信柱を見るのが好きなんです。

 なんか雰囲気あると思いませんか?」
と言うと、晃太郎が笑う。

「電信柱ができた当時は電信で手紙が届くと聞いて、電線を手紙が渡っていくと思ったのか。
 それを見ようと集まった人たちがいたらしいな」

「今聞いたら、笑ってしまいますけど、
 まあ、うっかりそんな風に思ってしまいそうですよね」

 珠子は手紙も小包もぶら下がっていない電線を見ながら呟く。