「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

「あのー、次郎様の名字は池田とおっしゃるのですよね?」

 船に乗るときにもらった書籍の売買の書類でようやくその名を知ったのだ。

 手際よく本を並べながら次郎は言う。

「そう。
 君を買った池田の従兄だよ。

 三条のお嬢様が平民の妾だなんて、可哀想だと思ってね。
 借金返済に少しでも、手を貸せたらと思って」

「……あ、ありがとうございます」

 実際、次郎はかなりの金額で本を仕入れてくれていた。

 まあ、それなりの価値のある本ばかりだったが。

「よし、終わり。
 ありがとう。
 お疲れ様、珠子さん」
と次郎は手をはたく。

「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」
と頭を下げながら、珠子は、

 ……門司からどうやって戻ろう、と思っていた。

「門司に寄港するまで時間あるから、お茶でもしようよ。
 うちの妹のドレスがあるから、着る?」

「え、でも――」