「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」



 ……さっき、ぼーっと船が出ていった気がするのは気のせいでしょうか。

 珠子は横浜港の大桟橋に停泊している豪華汽船の中にいた。

 船の中には婦人室と呼ばれる談話室があって、女性や子どもが自由にくつろげるようになっている。

 ピアノやゲームがあり、備え付けのレターセットなどもあるのだが。

 ここの棚に持参してきた和書や洋書を並べるのが珠子の仕事だった。

 まだ出港まで時間があると聞いていたのですが、今、船、出ましたよね?
と思ったそのとき、珠子に本の仕入れを頼んだ男、次郎がやってきた。

「ごめんごめん、珠子さん。
 出港の時刻を一時間間違えててね」

 ええっ? と驚く珠子の手から本をとり、次郎も一緒に並べてくれる。