晃太郎と一緒に新橋の橋ぎわにある勧工場、帝国博品館に来ていた珠子は、下駄の音の鳴り響く店内を歩いていた。
帝国博品館は三階建ての煉瓦造りで、時計塔もあるモダンなデザインなので、錦絵や絵葉書などにもなっている。
ちなみに、線路を挟んで向かいにあるのが、この間、高平と行った恵比寿ビヤホールだ。
この建物の中には階段はなく、傾斜路がある。
それが入り口から出口までつづいていて、ぐるっと一周回って見られるようになっているのだ。
これは江戸時代に建てられた仏堂、さざえ堂の構造をヒントにして造られたのだと言われている。
その傾斜のある通路でよろけた珠子の手を晃太郎がつかんだ。
「……お前と来るのではなかったな」
「えっ?」
「なんでも似合うから、なにもかも買わないといけない気がしてくる」
着物にこの帽子も似合うぞ、と被せられ、珠子は言った。



