「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

 正面から見ても美しかったが、横から見ると、すっと通った鼻筋が際立って見えて、より美しい。

 黄昏時の光が差し込む古書店の中に、知的な空間が作り出された気がした。

 だが、その本を手にこちらにやってきた男は、珠子を見て、うん? という顔をする。

「あ、いらっしゃいませ」

 男は本を買おうと珠子の前に差し出しながら訊いてくる。

「ここに珠子という娘はいるか」
「私ですが」

 そうか、と深く頷き、男は言った。

「私は岩崎晃太郎(こうたろう)
 友人の池田に、この店にいる珠子という娘をおもちゃにしてよい、と言われたので来た」

 ……すごい立派な顔で、なにを言っているのですかね? この人は。

「言い方が悪かったか」

 そうですね。

「珠子という娘を好きにしていいと言われたので――」

「いや、なにも変わってませんし。
 店先で物騒なことを言われても困るのでどうぞ、奥へ」

 おもちゃにしていいわけじゃありませんけど、と思いながら、珠子は晃太郎を座敷へと通す。