「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

 



 休日。
 珠子と晃太郎は芝居を見に来ていた。

 幕間に客席を離れ、屋根付きの通路を歩く。

 通路は、子供用の髪飾りや花などの形のヘアピン、台本や俳優たちの写真、それに、俳優たちが印刷された絹のハンカチなどが販売され、ちょっとした市場のようになっていた。

 庭には金魚の泳ぐ池などもあり、それらを眺めるのも楽しみのひとつなのだが。

 晃太郎はやけにキョロキョロしていた。

「どうされました?」
と珠子が訊くと、

「いや……。
 池田が来てないかと思って」
と言う。

「……晃太郎様、スパイのようですわ」

 そう珠子が言ったとき、艶やかな着物姿の娘たちが大きな声で話しているのが聞こえてきた。