「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

「深田さん」
と晃太郎が立ち上がると、珠子も立ち上がり、頭を下げる。

「なんと品のいい、お美しいお嬢さんだね。
 君にピッタリだな。

 さては、彼女が許嫁の?」

 あ、いえ、と晃太郎が言葉を濁すと、

「そうか。
 君にもそういうところがあったか。

 真面目すぎて融通がきかないと漆谷(うるしだに)が言っていたが――。

 だが、こんな美しいお嬢さんを泣かすようなことをしては駄目だぞ」
と深田はちょっと笑って言う。

 はあ、と晃太郎は自分が今、置かれている状況がよくわからず、曖昧な返事をしてしまった。

 ちなみに、漆谷は晃太郎の同僚だ。

 去っていく深田の後ろ姿を見ながら、晃太郎は呟いた。

「……一緒に食事に行ったら、お前は泣くのか?
 洋食じゃない方がよかったとか?」

 俺はこう言ったことは、よくわからないから、教えてくれ、と言ったが、珠子も首を傾げ、

「いや……、何度も言うようですが、私にもわからないので。

 あの、私などより、もっとこう、熟練の達人みたいな方を池田様にご紹介していただいた方がよいのではないですか?」

 なんの熟練の達人だ……と思いながら、晃太郎は言う。