晃太郎はそこから歩いていける洋食屋に珠子を連れていった。
窓際の席に着き、訊いてみる。
「この店に、来たことはあるのか?」
ありません、と珠子は言う。
洋装がよく似合うので、こういうところにもよく来ているのではないかと思ったのだが。
メニューを眺めていた珠子がふと言った。
「あの、もしかして、これがデエトなのではないですかね?」
「そうなのか?」
「お洒落をして、二人で食事に行く。
こういうのがデエトだった気が……」
「なるほど、そうなのか」
と晃太郎が深く頷いたとき、
「岩崎じゃないか」
と晃太郎より少し年上の男が声をかけてきた。



