「なかなか楽しかったね」 珠子は帰りの馬車で池田にそう言われた。 「そうですわね」 と珠子が微笑むと、 「また一緒に出かけてもらえるかな」 と向かいに座る池田は言ってくる。 「はい。 それが私のお役目ですから。 お役に立てたかはわかりませんが」 「充分だよ、珠子さん。 でもあれだね。 君の思い出の中に僕は全然いないね」 まあ、まったく出会ったことなかったですからね、と珠子は苦笑いする。 どうやら、池田はさっきの庭での話を聞いていたようだった。