「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

 確かに、今日の珠子は美しい。

 池田が用意した上質なドレスも髪飾りも、珠子によく似合っている。

 センスで負けた、と思っていた晃太郎だったが、いざというときのために、それらを揃えていたのは、もちろん、黒崎だった。

「晃太郎様」
「やあ、岩崎じゃないか」
と二人が話しかけくる。

 ……のはいいんだが。

 何故、女性陣がみな、わくわくした感じにこちらを見ているのだろうか。

 自分と池田が珠子を取り合っていることになっているとは知らない晃太郎は、首を捻りながら二人のところに行った。

 池田が小声で言ってくる。

「すまないね。
 ちょっと珠子さんを借りてるよ。

 どうしても、持ってこられたくない面倒臭い見合い話があってね」

「あ、ああ、そうなのか……」

「急いでいたものだから、説明する暇がなくてすまん」

 晃太郎は、ホッとしながら、
「いや、大丈夫だ。
 こちらこそ、気を使わせてすまん」
と言った。

 本来、珠子は池田のものなので、自分に断りを入れる必要もないのに……。

 池田は相変わらず、律儀な男だった。