「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

「でも、池田様ご本人は素敵ですわ」

「確かに。
 お似合いですわね」

「あら、むしろ、珠子さんが池田様と釣り合ってないんじゃありません?」

 赤いドレスの派手な女性がそう言うのが聞こえてきた。

 ……見たことあるな。

 女学校の先輩だったかも、と珠子は思う。

 池田は他の男性陣とちょっと離れたところで話している。

 その隙を狙って嫌味を言いにきたようだった。

「だって、珠子さんのお父様、雲隠れなさったのでしょう?
 生活が立ち行かなくなって」

 扇の陰、紅い唇で、その名前が思い出せない先輩が笑っているのが見えた。

「いえいえ。
 雲隠れとか、そんな小綺麗な言い方で表せるようなものではありませんわ」
と珠子は言う。

「破産で、夜逃げですわ!」

 まあっ、とみんなどよめいた。