先に正気に返ったのは、晃太郎の方だった。
「違う。
デエトの仕方を探してたんだっ」
と言ったあとで、外を見る。
「だがもう暗くなったから、なにか食べに行こうか」
奢ろう、と珠子に向かい言った。
珠子は読んでいた本を閉じ、
「行きましょうか。
でも、奢ってくださらなくて結構ですよ」
と言う。
「いや、今は俺が池田に代わって、お前を養っているようなものだから」
言いながら、あ、『俺』になってしまったな、と思ったが、珠子はそこには触れずに、
「池田様にもご馳走になったことはないので。
ほんとうにいいですよ」
と断ってくる。
だが、晃太郎は、
「いい洋食屋があるんだ。
行こう」
とちょっと強めに押して言ってみた。
そうですか? じゃあ、と珠子は立ち上がる。



