「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

 そのまま黙っていようかと思ったが、それも卑怯かと思い、晃太郎は珠子に教えた。

「……あれが池田だ」

 お前の本来のご主人様の――。

 ええっ? と珠子は驚き、もう一度池田の姿を探そうとする。

 池田はなかなか男振りのいい男だ。

 ほんとうは池田と珠子を会わせたくはなかった。

 ……なにより、池田が、今までは用意された大勢の妾の中のひとりに過ぎなかった珠子に関心を持ってしまうのではないかとハラハラしていた。

 この大勢の観光客の中。

 美しく着飾ったご婦人方もたくさんいるが、珠子はこの中の誰より輝いているからなっ、と、

「……いや、落ち着け」
と兄、高平にまで言われそうなことを晃太郎は思っていた。