「明治大正ロマンス ~知らない間に旦那様が変わっていました~」

「そちらのお嬢さんは?
 ――ああ、さては、この方が噂の結婚相手かな?

 さすが岩崎の選んだ人、素敵な人だね」

 仕事中だったらしく、一緒にいた男の人たちが図面を見ながら何処かを指差さし歩いていっているのに気づくと、

「おっと、いけない。
 じゃあ、お祝いはまた今度ゆっくり」

 では、失礼します、と頭を下げ、男はすぐに行ってしまった。

 珠子は深々と彼に向かい、頭を下げる。

「感じのいい方ですね。
 さすが晃太郎様のお友だちですね」

 珠子は微笑んだが、晃太郎は迷うような顔をしたあとで言った。

「……あれが池田だ」

 ええっ? と珠子は今、去っていった男を振り返ったが、もう人波に消えていた。