春の約束、夏の嘘

美咲の言葉を聞きながら、遼の胸にふいに蘇るものがあった。

 あの夜、幼い二人で眺めた流星群の光景。

 夜風に震える肩を並べ、星に願いを託したあの瞬間。

『わたしね、秘密のお願いをしたの。……絶対、ひみつだから』

 無邪気に笑っていた美咲の声。

 そして、自分が心の中で誓った言葉――「もう一度、一緒に星を見たい」。

 あの約束は、十数年経った今でも鮮やかに胸に残っている。

 けれど、目の前の美咲にそのことを口にする勇気はなかった。

 彼女は今も変わらず、明るい笑顔で星を語っている。

 その姿を壊すように、過去の約束を持ち出すのは、なぜかためらわれた。

(……俺だけが覚えているのかもしれない)

 遼は視線を落とし、口を閉ざした。

 胸の奥で響く約束の残響を押し殺すように。

 美咲はそんな遼の内心に気づくことなく、楽しげに話を続けていた。