春の約束、夏の嘘

「じゃあ、次はわたしの番かな」

 遼の研究話を一通り聞き終えてから、美咲はいたずらっぽく微笑んだ。

「わたしね、今はプラネタリウムでバイトしてるの」

 意外な言葉に、遼は瞬きをする。

「……プラネタリウム?」

「そう。子どもたちに星の話をしたり、星座を映したりするの。最初は緊張したけど、子どもたちが『すごい!』って目を輝かせてくれると、すごく嬉しくなるんだ」

 その瞳が、その場を思い浮かべているかのように輝いている。

「この前なんてね、夏の大三角を説明したら、小さな子が『ぼくも彦星さまみたいになれる?』って聞いてきたの。かわいくて思わず笑っちゃった」

 美咲は声を立てて笑い、その笑顔が研究室の空気を一気に明るくした。

「それに、投影機の操作も練習してるんだよ。……まだよく失敗するけどね。昼間の空を出しちゃったりして」

「昼間……」

 遼の口から自然に笑いが漏れた。自分でも驚くほど、柔らかな笑いだった。

「でも、そんな時も子どもたちが『おひさまー!』って笑ってくれるの。だから、失敗も悪くないなって思えるんだ」

 美咲はそう言って肩をすくめる。

 遼はその姿をじっと見つめていた。

 彼女にとって星は、物語であり、心をつなぐ存在だ。

 数字と理論の中に星を探す自分とは、まるで対照的だった。

 けれど、その違いを不思議と心地よく感じている自分に気づき、遼は胸の奥で小さく息を飲んだ