無敵なお嬢様はだまっていられない! 〜問題児な執事4人を、私がまとめてプロデュース!?〜

 ついに、「ロイヤル・ガーデン・パーティー」当日。
 いつものにぎやかさが嘘みたいに、控え室はしんと静まり返っていた。
 私は鏡の中の自分を、まるで知らない誰かみたいに見つめていた。
 お母様が用意した、真っ白なドレス。
 シルクとレースがたっぷり使われていて、光を受けるたびにやわらかくきらめく。
 髪はレオくんがきれいにまとめてくれていて、ふわっと軽い。
 そこには、夜一くんが用意してくれた銀の髪飾りが光っていた。まるで月の光みたいに、静かで上品に。
 
 心拍数、上がりすぎ。……落ち着きなさい、すず。

 何度も深呼吸する。
 でも、うまく息が入ってこない。

 ドレスのせい?
 それとも――これから始まる大勝負のせい?

 指先が、少し震えていた。

「……お嬢。大丈夫か?」

 後ろから声がして振り向くと、嵐くんが立っていた。
 いつものラフな雰囲気はどこにもない。
 特注の燕尾服に身を包んだ姿は、まるで別人みたいだった。

 がっしりした体にぴったり合ったその服は、“強さ”じゃなくて“守ってくれる安心感”を感じさせる。

「……嵐くん。少し苦しそうね。その服」

「……まあな。でもさ」

 嵐くんは、にっと笑った。

「お嬢の隣に立つなら、このくらいじゃないとカッコつかねぇだろ」

 その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。

 その時、すっと横に気配が現れる。

「……すず様」

 夜一くんだった。

 黒い燕尾服は、まるで影そのものみたい。
 でもよく見ると、袖や襟に銀の刺繍が入っていて、さりげなくきらめいている。

「……今日のあなた、とても綺麗です。……だから、僕も影として、ちゃんと支えます」

 静かにそう言って、ドレスの裾を整えてくれる。

 その動きはとても丁寧で、やさしかった。

「……ふふ。そんなに褒められると、緊張で溶けちゃいそうだわ」

「それは困るなぁ」

 軽い声と一緒に現れたのは、レオくん。

 彼の燕尾服はボルドー色で、他の三人よりも華やか。
 胸元の飾りやレースが、すごく目を引く。

「お嬢様。最高のドレスに、最高のヘアメイク。
 それに僕たち四人がいれば――」

 にっこり笑って、ウインク。

「もう舞台は完璧だよね?」
「……そうね。悪くないわ」

 思わず笑ってしまう。

 みんなが、ちゃんとここにいる。
 それだけで、少し怖さが消えていく。

「……見た目だけなら、合格だな」

 少し離れたところから声がした。
 朔だった。
 椅子に座っていたけど、ゆっくり立ち上がる。
 黒の燕尾服はシンプルで無駄がなくて、すごく落ち着いて見える。
 前みたいな張りつめた感じはない。
 ちゃんと“今の朔”の空気になっていた。

「……朔くん。インカムは?」
「問題ない。ちゃんと聞こえてる」

 軽く答えてから、少しだけこちらを見る。

「……それと、深呼吸くらいちゃんとしろ。
 手、震えてるぞ」
「……!」
「紅茶、こぼされたら困るからな」

 ぶっきらぼうだけど、やさしい声だった。

 その一言で、不思議と心が落ち着いていく。

 朔はマイクに軽く触れて、短く指示を出した。

「……嵐、前方注意。
 夜一、いつでも隠れられる位置に。
 レオ、空気は任せた」

 そして、少しだけ間をおいて。

「……お嬢は、俺が見る。
 だから、気にせず行け」

 その声は静かで、でもしっかりしていた。

 胸のドキドキが、すっと落ち着いていく。

「……ええ。そうね」

 私はみんなを見渡して、微笑んだ。

「行くわよ。
 世界で一番――めちゃくちゃで、最高に完璧なパーティーを見せてあげる!」