無敵なお嬢様はだまっていられない! 〜問題児な執事4人を、私がまとめてプロデュース!?〜

 「…っ、雪城さまだわ」
 「しっ、静かに!目があったら失礼よ」

 私が校舎の長い廊下を歩き始めると、さざなみのように周囲の空気が変わる。
 さっきまで楽しそうにおしゃべりに花を咲かせてた令嬢たちが、ササっと道を開けていく。

 カツ、カツ、と優雅に響く、私の靴音。
 ピンと伸びた背筋に、顔に貼りついた完璧な微笑み。

「雪城さま、ごきげんよう」
「ごきげんよう。みなさん、今日の講義も頑張りましょうね」

 優雅に会釈を返しながら、私は内心で深いため息をついた。

 私、雪城すず。
 ここ、白薔薇学園の中等部2年生。

 白薔薇学園っていうのは、代々続く名家や超セレブが集まる、全寮制の超エリート校。
 お城みたいな校舎に、プロのシェフが作るランチ。
 ……っていう、いかにもお嬢様の学校なんだけど。
 この学園、ちょっと変わったシステムがあるんだよね。
 コースが二つに分かれてるの。
 一つは、世界に通用する教養と品格を身につける『令嬢育成コース』。
 もう一つは、あらゆる分野で主をサポートする、完璧なプロ執事を目指す『執事育成コース』。
 普段は別々に授業を受けてるんだけど、時々「合同演習」っていう授業がある。
 そのときは、令嬢が執事コースの生徒を一人選んで、パートナーとして課題に挑まないといけない。
 つまり――執事コースの生徒にとって、令嬢に選ばれることは、将来のキャリアが決まる最大のチャンスってわけ。

 そんな学園で、私は周りからこう呼ばれている。——『完璧令嬢(パーフェクトプリンセス)』って。

 成績は常に学年一位。
 立ち振る舞いも完璧。
 どんな無理難題でも、さらっと解決。
 みんなの憧れのお嬢様。
 ……らしい。
 ……でもね、みんなは知らないだけ。私がどうして完璧にこだわるのか。

 「結果がすべてだ、すず。雪城家の人間なら、過程なんてどうでもいい。常にトップでありなさい」

 それが、私の家の鉄の掟。
 パパやママに褒められたことは一度もない。「できて当たり前」の世界。
 努力して、泣いて、必死に頑張った過程なんて、誰も見てくれない。

 だからかな。私は、つい見ちゃうんだよね。
 人が、結果を出すためにどれだけすごい努力をしているのか。
 その人がまだ気づいてない、ポテンシャルがどこにあるのか。
 
 誰だってきっと、磨けば輝く最高のポテンシャルを持ってるはずなんだから!