いつか、桜の季節に 出逢えたら

今日は、ハンモンの拡張版の発売日。
発売日が土曜だから、休みはゲーム三昧できるのだ。

「これ、どのくらいでクリアした?」

「高校生の頃は、親に隠れて一人でやってたからね。結構、時間かかったかなぁ……受験生だったしね」

「でも、大学から家を出たから、オンラインで友達ができてね……そういえば、2025年にオフ会するとか言ってたなぁ……戻れたら、会えるかなぁ」


「なにそいつ、男?」

やきもちを焼いてくれてるのかな。
なんだか嬉しい。


「女の子だよ。なんか、妙に気が合ってね。やってほしいことを何も言わないのにやってくれてるというか、動いてくれるっていうか。とにかく、すごく上手なんだよ。会う約束をしてたんだけどね……」


「それにしても、手が止まらないよねー」

「ねー」

しかし、いくら面白いからといっても、残りの一週間を、ゲーム「だけ」に溶かしても良いものか。


時間をあげるとは言ったけど、私のわがままも聞いて欲しい。

「よし! 放課後デートをしましょう!」

「……へ?」


学校から自宅へ帰るのとは逆向きの電車に乗って、海を見に行くことにした。

「私、勉強漬けだったから、制服でデートするの、憧れだったんだよね」

車窓から見える、いつもと全く違った景色に浮かれている。


「海はね、地元にもあるんだけど、普通の海水浴場だから、いまいちロマンチックさに欠けるというか。ほら、映画とかドラマとかに出るような海が見てみたくて」

「はいはい、仰せの通りに」

駅から降りて、海までの道すがら、その辺の店で買ったクレープを食べながら、足取り軽く歩く。


紫苑と一緒に出かけるのが嬉しくもあり、最後の遠出になってしまうのが切なくもあり。
無理に元気に振る舞うけれど、心の奥の寂しさが消えることはない。

到着した海は、確かに映画で見た海と同じだったけど、思ったよりロマンチックな風景ではなかった。
予想よりも波が荒かったからだろう。

「うーん、こんなもんかぁ。これなら地元の海とあまり変わらないな。時期が良くなかったかなぁ。夏にも、来たかったな……」

テトラポットのある防波堤に、二人で腰掛け、海を眺める。


「……まぁ、こんなところにまで、持って来ちゃうのが、我々なんですけれども」

カバンの中から、お互い、携帯ゲーム機を出す。


「なんか、結局、ゲームしちゃったね。ごめんね、こんな遠くまで付き合ってもらっちゃって」

時折、防波堤に打ち付ける、波の音がする。


「……いいえ。俺は、あなたといられれば、どこでもいいんで」

海を見つめる紫苑の瞳が、夕日に照らされて、とてもきれい。
彼といられるのも、あと数日。そう思うと、胸がキュッと締めつけられる。

「……紫苑、ごめんね。いろいろとお願いを聞いてもらって。絵梨花のためとは言ったけど、私の都合でもあるから……ごめんね」

「……いいよ」