(っ、二次元の推しの台詞を、リアルの推しが言ってくれるなんて……!)


わたしが内心で悶えていたら、ムスっとした顔をした悠月に、頬っぺたを思いきり引っ張られてしまった。


「いたたっ、もう、悠月ってば何するの? 痛いじゃん!」

「うるさい。紗南が変な顔してるのが悪い」

「えぇ、わたし、そんな変な顔してた……?」


自分の頬っぺたをふにふに触りながら首を傾げていたら、おかしそうに笑っていた有栖さんが質問をしてくる。


「ちなみに、紗南ちゃんにとっての推しっていうのは、どんな存在なの?」

「わたしにとっての推しですか? そうですね……わたしにとっての推しは、生きる原動力みたいな感じかもです! 推しがいるから、辛いこととかも頑張れますし、推しが楽しそうにしているのを見ると、わたしまで嬉しくなれちゃうんです」

「生きる原動力かぁ。何かいいね、その表現」

「はい! だから、そういうたくさんの人たちにとっての“推し”であるmeteor(メテオ)の皆さんは、本当にすごいと思います。もうこの世に存在しているだけで、この世にいるたくさんの人たちを幸せにしてるってことなんですからね!」

「ふふ、存在しているだけでって言うのは、少し大袈裟じゃない?」


潤さんが可笑しそうに笑う。

でもね、全然大袈裟なんかじゃないと思うんだ。
だってわたしにとっての推しは、笑っていてくれるだけで、ハッピーになれちゃうような存在だから。
わたしみたいな考えの人だって、きっといると思うんだけどなぁ。