「あれ? 紗南ちゃん、何のゲームをしてるの?」


一日の授業が終わり、放課後になった。
悠月とわたしのクラスは、今日は最後の授業が早めに終わったから、ミーティングルームに一番についた。
だから星穏さんたちがくる前に、大好きな“きらアイ”のストーリーを、少しだけでも進めちゃおうって思ったの。

――だけど、思っていたよりもずっと早くミーティングルームにやってきた有栖さんたちに、ゲームをしているところを見られちゃった。


「えっと、これは“きらめき! アイドルプロデュース☆”っていうゲームです!」

「へぇ、聞いたことないなぁ。どんなゲームなの?」

「アイドルを育成するっていうゲームなんです」

「面白そうやん!」

「……もしかしてさ、紗南ちゃんが好きなのってこの子じゃない?」


ちょうどホーム画面に設定していた推しの日向響音くんを見た有栖さんは、確信めいた声で聞いてくる。


「はい、そうです! わたしの推しなんです!」

「やっぱりねぇ。……紗南ちゃんが好きっていうこの男の子さ、何か雰囲気とか、どことなく星穏に似てない?」


有栖さんは、口許に手をそえながら、にまにました顔でそんなことを言ってくる。
星穏さんはきょとんとした顔で自分のことを指さしてから、ゲームの画面に視線を向けた。


「“君は、おれにとって何よりも大切な存在なんだ。“……こんな感じで合うとる?」


ホーム画面に書かれている響音くんの台詞を真似した星穏さんは、照れくさそうに笑っている。