「紗南、どうする」
悠月が、ステージ上にいる影を鋭い目で見つめながら尋ねてくる。
「……わたしに考えがあるの」
わたしは、思いついた作戦を悠月に伝えた。
そして、黒い影を何とかするべく、すぐに動き始める。
「――You’re so special to me」
星穏さんが自分のパートを歌い終えたタイミングで、わたしは黒い影に向かって術を放った。
すると突風が出てきて、ステージ上を吹き抜けていく。
黒い影はその場で動きを止めて、星穏さんたちから視線を外すと、こちらに振り向く。
「悠月、今だよ!」
わたしが合図すれば、今度は悠月が陰陽術を使う。
「樹木精・縛・急急如律令!」
取りだした式札を指ではさんだ悠月がそう唱えれば、植物の蔦のようなものがしゅるしゅると伸びていく。
黒い影を捕らえながらも、三人の背後で枝は四方に伸びていく。



