「……紗南ちゃんの言う通りやな。かくさないで、潤と有栖にきちんと話すことにする」

「はい、それがいいと思います」

「でも黙ってかくそうとするとか、おれ、カッコ悪すぎるよな」

「え? そんな、カッコ悪いことなんて一つもないですよ! そんなに腫れて痛いはずなのに、それでも星穏さんは、ライブにきてくれる人たちのためにメンバーにも秘密にして、痛みを我慢してまで頑張ろうとしてたんですよね? それってすごいことです。わたしは、むしろカッコいいなって、そう思いますよ」


力説するようにそう言えば、星穏さんは目を丸くしてから、プッと噴き出すように笑った。


「紗南ちゃんは、ほんまにええ子やな」


そう言った星穏さんは、ベンチの上に転がっていたメイク道具をポーチに片付けながら、ぽつりぽつりと話し出す。


「おれな、小さい時から、歌うことが大好きなんよ。おれの歌で笑顔になってくれる人たちを見るのが好きでな、アイドルになって、たくさんの人たちに幸せを届けるのが夢なんや」


メイク道具を持った星穏さんは、その場に立ち上がると、わたしが昨日YouTubeでも見た曲のサビ部分をくちずさむ。