「実はな、木の上に迷い猫がおったから、何とか助けられんかなぁ思ってたら、猫が飛び降りてきたんよ。そん時、とっさに受け止めようとしたら、体制を崩してこけて、ひねってもうて」


星穏さんは気恥ずかしそうに笑っている。

そっか、星穏さんは猫を助けようとしたんだ。
そんな優しいところも素敵だなぁ……なんて、今はそんなのんきなこと言っている場合じゃない!


「ちょっと待っててください!」

「って、紗南ちゃん!?」


わたしはとりあえず、全力ダッシュで保健室に向かった。ついさっき通ってきたから、保健室の場所は把握ずみだ。
でもタイミング悪く保健室の先生は不在にしているみたいだったから、勝手に棚をあけさせてもらって、湿布と包帯をもらった。
先生ごめんなさい、あとでちゃんと報告にきます!


「星穏さん、お待たせしました!」

「うぉ、紗南ちゃん、戻ってくるんめっちゃ早ない? って、それは……」

「湿布とか包帯、もらってきました。とりあえずこれで応急処置しましょ」


星穏さんの左手首を触ってみた感じ、骨が折れているようなことはなさそうだ。
患部に湿布を貼って包帯を巻いてと、簡単な処置をしていく。


「あ、そうだ! 潤さんたちが、星穏さんのことをさがしてましたよ? ライブの打ち合わせをしたいから、ミーティングルームにきてほしいって言ってました」

「あ、打ち合わせ! やばい、すっかり忘れてたわ……!」

「とりあえず、潤さんに見つかったって連絡しておきますね」


潤さんにメッセージを送っていれば、それをジッと見ていた星穏さんは「ずるいわ」と言う。