(この短い時間で、潤さんとの距離がグッと縮まった気がするなぁ)


ちょっぴり嬉しくなりながらも、潤さんと別れて、星穏さんをさがして校内を歩く。
潤さんと有栖さんは校舎内をさがしているみたいだし、わたしは中庭の方でもさがしてみようかな。

昨日お昼ご飯を食べていたあたりを歩いていたら、ベンチに腰掛けている星穏さんの後ろ姿を見つけた。


「あ、星穏さん!」


駈けよれば、星穏さんは“見つかった!”って顔をして、なぜか両手を後ろにかくした。


「さ、紗南ちゃんやん。こんなところで会うなんて、奇遇やなぁ」

「星穏さん……今、何かかくしましたか?」

「え? か、かくしとらんよ! なーんも、かくしとらん!」

「……」


――あやしい。すご~く、あやしい気がする。

無言でジーッと見つめていれば、星穏さんは観念したらしく、かくした手を前に出した。


「って、星穏さん、その手首どうしたんですか!?」


星穏さんの左手首は、痛々しく腫れあがっていた。
内出血しているのか、肌の色が変色して、紫色になっている。すっごく痛そうだ。